2026年の監査委員会の議題 4 min read プロティビティは毎年、主に米国企業の監査委員会の方々とのやりとりで得た情報や、現役取締役の方々から示された洞察を集約した「監査委員会の議題」を公表しています。2026年は、監査委員会メンバーに対する要請が一段と高まる一年になることが予想されます。本年の議題として取り上げた9つのテーマには、監査委員会の責任範囲が従来の枠組みを超えて広がりつつある現状が反映されています。監査委員会の監督機能に対する期待が高まる中、多くの監査委員会は、より広範な全社的リスクやガバナンス上の課題への対応を求められています。さらに、サイバー、AI、人材、サードパーティといった主要リスクは相互に関連性を強めており、組織には、部門横断でリスクを統合的に捉え、評価し、管理するための戦略的アプローチの構築が求められています。また、監査委員会の構成や議題の焦点を定期的に評価する際の参考となる「監査委員会の有効性の自己評価」用の質問例もご用意しています。(和訳は追って、公表します)。日本語版PDF 英語版PDF 監査委員会は、積極的に連携し、洞察を提供すべきである。 2026年における監査委員会への指針* 1. テクノロジーが統制環境に与える影響を理解する + 企業がAIの導入やテクノロジーの近代化を加速させる中で、内部統制の設計およびその有効性は、これらの変革が組織の強化につながるのか、それとも不安定化を招くのかを左右する重要な要素となります。自動化は業務効率を大きく向上させる一方で、変革の過程で統制への影響が十分に検討されていない場合、企業は業務上の誤謬、不正リスク、コンプライアンスの欠如といった課題に直面する可能性があります。こうした変化を見据え、監査委員会は、責任の明確化、強固なガバナンス、内部統制に対する継続的かつ前向きな評価を求めることで、テクノロジー投資が組織のレジリエンス向上につながるよう支援することができます。 2. 経営陣のガバナンス構造を再評価する + 急速に変化するテクノロジー、規制環境、そして市場環境に適応するうえで、強固なガバナンスは戦略と監督機能の整合性を保つ基盤となります。三線モデルにおける明確な責任分担や、ライン間の調整を支える仕組みが不十分な場合、重要なリスクが見過ごされ、重大な問題に発展する恐れがあります。適切に機能するガバナンス構造は、リスクオーナーと内部監査を支え、レジリエンス・透明性・ステークホルダーの信頼を高める好循環を生み出します。 3. サイバーセキュリティおよびデータプライバシーリスクへの対応を継続する + サイバーセキュリティおよびデータプライバシーのリスクは、第三者エコシステムの拡大によって複雑化・高度化し、企業のレジリエンスおよび取締役会の説明責任の中心的な論点となっています。AIがイノベーションを加速させる一方でリスクエクスポージャーも増大する中、監督の重点は従来のコンプライアンス中心の確認から、経営陣がどのように新たな脆弱性を予測し、軽減し、社内外へ適切に伝達しているかを追跡する「戦略的保証」へと移行しつつあります。監査委員会が十分な情報に基づき主体的に関与することは、サイバー防御への適切な投資を後押しし、説明責任を強化し、組織のトップから警戒と透明性を重視する姿勢を明確に示すことにつながります。 4. AI への投資とガバナンスのバランスを適切に確保する + AIは企業が価値を創造し、リスクを管理する方法を再定義しています。イノベーションのスピードが従来の監督手法を上回る中で、取締役会がAI投資を健全なガバナンスと整合させることは不可欠です。監査委員会がオーナーシップの明確化、強固な統制設計、モデルのパフォーマンスや倫理に関する高い透明性を求めることで、AIは整合性、コンプライアンス、ステークホルダーからの信頼を損なうことなく、測定可能な価値を生み出すことができます。 5. 革新を推進し、不確実性に対応する組織の人材・能力を評価する + 不確実性が高まる環境では、人材はガバナンスにとって、成長における資本と同様に不可欠な要素となります。組織の財務面・分析力・リーダーシップ能力を理解している監査委員会は、リスクをより正確に見極め、前提条件を適切に検証し、経営陣の判断に対して建設的な問いを投げかけることができます。社内の人材戦略を強化するとともに、外部パートナーとの連携を活用することで、企業は不確実性への迅速な対応、透明性の維持、そして投資家の信頼確保につなげることができます。 6. 規制リスクに対する許容度を見直す + 規制要求が一段と強まる中、企業が掲げるリスク許容度と、実際にさらされているリスクとの乖離は、短期間のうちにコンプライアンス違反やレピュテーション毀損へ直結しかねません。監査委員会は、規制リスク許容度に関する共通理解を組織全体で醸成することで、こうしたギャップを埋める重要な役割を果たします。具体的には、経営陣が成長機会と説明責任のバランスを適切に取りつつ、複数の市場や法域において信頼性を維持できるよう支援することが求められます。 7. 倫理的行動を促進する企業文化を評価する + 文化は統制であると同時に、シグナルでもあります。取締役会や監査委員会が文化を「測定可能で、報告すべきリスク監督の構成要素」として扱うことで、不正や不祥事が重大化する前の行動変化や兆候を早期に把握できるようになります。企業文化を積極的にモニタリングし、倫理やエスカレーションに関する明確な説明責任と結び付けて管理することは、組織の健全性を維持し、信頼を強化し、さらにはプレッシャーや変化の大きい局面でもレジリエンスを高めるうえで不可欠です。 8. 財務報告以外へ広がる期待を踏まえて監査委員会の専門性と構成を評価する + 監査委員会の責務が拡大する中、その専門性も同じ速度で進化させていく必要があります。委員会の構成を継続的に見直し、取締役の育成に投資している取締役会は、急速に変化するテクノロジー主導型のリスクに機動的に対応できる体制を築くことができます。 また、定期的な自己評価とスキル強化は、監督機能と説明責任を一層高めるだけでなく、監査委員会が将来のリスクや環境変化に備えるうえでの準備性(レディネス) を強化することにもつながります。 9. 将来を見据えて内部監査機能の再構築を理解し、支援する + 保証業務へのAIの統合が加速する中、内部監査には、先進的なテクノロジーを活用しつつ、職業的懐疑心、倫理的判断力、そしてビジネス感覚を組み合わせる能力がこれまで以上に求められています。この変化に効果的に対応するためには、監査委員会による積極的な監督と、CAEとの建設的なパートナーシップが不可欠です。こうした連携により、内部監査は信頼性の高い独立したアドバイザーとしての役割を維持しながら、ガバナンスの強化、透明性の向上、そして企業の誠実性に対する信頼の確保に貢献し続けることができます。 *監査委員会は、自らのパフォーマンスを定期的に自己評価することが推奨されています。本稿の補足資料として、委員会の評価に活用できる質問集も用意しています。 Topics 取締役事項 内部監査/コーポレートガバナンス リスクマネジメント/規制対応 AI(人工知能)