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取締役会にとってのAIの重要な局面

成功とは、すべての正しい答えを持つことではなく、適切な問いができるかによって決まるものである。

はじめに

2026年のグローバル・ボード・ガバナンス調査の結果を読み解く

5 min read

AIの能力が成熟し、より多くの価値を創出するとともに、期待されるROIを実現する中で、取締役や経営幹部のリーダーには、運用への統合、適切なガバナンス体制、短期および長期の利益、誤情報や不正確な情報に起因するリスク、そして効果的な導入における障害について、洞察に富んだAI関連の問いを投げかけることが求められています。また、AIをすべての取締役会の議題における常設項目として位置づけるべき時期に来ています。これは、現時点では多くの取締役会でまだ実現されていません。

調査から得た主な洞察 

AIの取り組みから成果を上げている組織と、いまだ実証・試行の初期段階にある組織との間には、明確な差があります。その差を生み出している要因は何でしょうか。それは、より多くの情報を得て、積極的に関与し、適切な問いを投げかける取締役会の存在です。

95 %

AIを効果的に統合する能力に自信を持つ組織の95%が、AIの取り組みから期待を大きく上回るROIを得ている。

33 %

AIを効果的に統合する能力に自信を持たない組織では、AIの取り組みから期待を大きく上回るROIを得ている割合は33%にとどまる。

26 %

AIをすべての取締役会で常設議題としている組織は26%にとどまっている。

主なテーマ 

効果的なAIの統合と責任あるAI導入は、より期待を大きく上回るROIの創出につながります。

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組織は、包括的なフレームワークの適用、透明性の確保、倫理的な取り組みの重視、そしてリスクへ前向きに対応することで、AI技術を責任を持って業務に統合する能力への自信を高めています。その結果、AIを効果的に統合する能力に自信を持っていると報告している組織の多くが、AIの取り組みから期待を大きく上回るROIを実現しています。

AI成熟度が高い組織では、取締役会のすべての会議でAIが議題として取り上げられています。

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取締役会における最も大きな違いの一つは、AIがどの程度の頻度で議題に挙がっているかです。AIの取り組みから期待を大きく上回るROIを得ている組織では、約3分の2(63%)の取締役会が、すべての会議でAIを議題に含めています。一方、ROIが低い組織では、その割合はわずか13%にとどまります。

*調査設問:組織は、期待されるROIの実現以外に、AIシステム導入によってどのような主なメリットを期待していますか。(最大3つ選択)

主なメリットとして、業務プロセスの効率化に加え、AI成熟度が高い組織では顧客体験の向上が挙げられます。

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取締役や経営幹部は、AIの最大のメリットとして業務プロセスの効率化を挙げていますが、組織のAI成熟度によって認識に顕著な差があります。例えば、AI成熟度が高い組織では、顧客体験の向上を主要なメリットと捉えるリーダーの割合が、成熟度の最も低い組織と比べて約2倍に上ります。

AIにおける最大の障壁はイノベーションリスク

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AI成熟度が最も高い組織の多くは、AIイノベーションに伴うリスクの管理に懸念を抱いています。一方で、AI変革の初期段階にある組織では、その割合はわずか20%にとどまります。また、AI活用が進んでいる企業においては、人材不足やインフラの制約も重要な課題として認識されています。

取締役のためのFAQ

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AIはすべての取締役会において常設議題とすべきでしょうか。

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組織の特性や業界によりますが、原則としてそのとおりです。AIを、企業戦略、価値創出、イノベーションの優先事項、そして競争上のポジショニングと明確に結び付けたうえで、取締役会の常設議題とすることが重要です。また、説明責任の強化と理解の深化を図るために、AIに関して取締役レベルで経営陣と定期的に議論を行うことが求められます。

AIを自社の経営目標とどのように戦略的に整合させるべきでしょうか。

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AIの取り組みを、イノベーション、顧客成果、そして競争上のポジショニングと結び付けることが重要です。また、AIの構想を、技術インフラや人材能力への継続的な投資と連動させた、エンドツーエンドのAIロードマップについて、経営陣の評価を行う必要があります。さらに、AIの動向、規制、機会、リスクに関して、経営陣から取締役会へ定期的な報告を行うことが求められます。

自社における責任あるAIガバナンスの推進において、取締役会はどのような役割を担うべきでしょうか。

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倫理性、透明性、信頼性を備えたAIの導入を、全社的に根付かせることが重要です。そのためには、倫理的かつ責任あるAIの活用を企業ガバナンス上の重要課題として位置づけ、明確な責任体制、リスク監督、そして組織全体のガバナンス枠組みへの統合を図る必要があります。また、自社におけるAI活用の範囲や規模を踏まえ、経営陣のAIガバナンス体制に対する取締役会の監督が、その内容・範囲・タイミングの観点から適切であるかを評価することも求められます。

準備状況や対応能力をどのようにモニタリングすべきでしょうか。

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テクノロジーのモダナイゼーション、データ品質、スキル、そしてロードマップは、継続的に進化させていく必要があります。AI活用の初期段階にある組織においては、業務効率化やコスト削減、生産性向上といった観点にとどまらず、より変革的な取り組みへと視点をシフトするよう、経営陣に働きかけることが重要です。例えば、顧客体験の向上や、売上成長や市場シェア拡大につながる製品・サービスの強化などが挙げられます。

取締役会の監督体制をどのように強化すべきでしょうか。

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AIの戦略的重要性を踏まえ、責任の所在、報告の頻度、委員会の役割を明確化することが重要です。また、AIの成熟度やROIの水準における自社の位置づけに応じて、取締役会によるAI監督における優先事項を調整し、成熟度の向上や適切なROIの達成に向けた進展に合わせて、議論のテーマを見直していく必要があります。

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