セガサミーホールディングス株式会社様:DXによる監査プロセスの一元管理 1 min read 監査の質的向上を実現し、「提案力のある監査部門」に~内部監査業務におけるGRCツールの導入~グローバルに事業を展開する総合エンタテインメント企業グループ、セガサミーホールディングス。当社の経営監査本部は、「世界中の仲間たちから頼られる存在であれ」を“ありたい姿”とし、アシュアランス業務からアドバイザリー業務に軸足をシフトさせるなかで、特定の監査人に依存しない監査管理・報告の仕組みの構築が喫緊の課題となっていました。2024年にGRCツール「Diligent One」を導入。その直後から監査の質の向上を実感しています。 【GRC導入前】属人性に依存しない業務体制の確立が急務セガサミーホールディングス株式会社は、ゲームのセガ、遊技機のサミーが2004年10月に経営統合して誕生した総合エンタテインメント企業グループです。国内に約40社、海外に50社を超えるグループ会社を持ち、「エンタテインメントコンテンツ」「遊技機」「ゲーミング」の3つの事業をグローバルに展開しています(2025年4月現在)。 Image 当社の経営監査本部は、「グループ企業価値の最大化」をミッションに掲げ、「世界中の仲間たちから頼られる存在であれ」を“ありたい姿”として、国内外のグループ企業に対して、内部監査、内部統制評価、モニタリング監査等を行っています。経営層だけでなく、現場の社員からも頼られる存在を目指して、アシュアランス業務はもちろん、昨今はアドバイザリー業務にも注力しています。内部監査管理ツールの導入を検討する前に、プロティビティに「内部監査の外部品質評価」を依頼したことがあります。当時の課題認識は、システム化以前に監査業務そのものの変革が必要だというものでした。まずはそこから着手し、監査業務の効率化や標準化などを認識するなかで、コロナ禍に遭遇し、現場に足を運んで監査を行うことが難しくなりました。また、当社の構造改革に伴い、監査部門から約4割のベテランがグループを離れることとなり、多くの貴重な監査ノウハウが失われるなかで、属人的な能力に依存することなく、一定の監査技術・能力を持つ監査人であれば、経営の期待に応える監査報告ができる仕組みの構築が喫緊の課題となっていました。 【GRC導入検討】現場の理解に基づいた最適な提案が決め手に ツールに求めたのは、監査業務のプロセス管理を目的として、個別の監査業務や年間計画などの情報をツールに載せて、データベース化し、一元管理することです。同時に、業務の標準化や各種フォーマット等の改善・改定を行い、内部マニュアル化したいと考えました。複数の提案のなかから、プロティビティの「Diligent One(以下、Diligent)」を選定したポイントは、当社との長年にわたるリレーションシップにより、当社のビジネスや現場についての深い理解があったことです。実は以前、当社のIT部門がプロティビティのコンサルティングを受けたことがありますが、そのときも、実務に合わせた丁寧な対応が評判となっていました。 Image 「Diligent」のような最先端の管理ツールに移行することに対して、Microsoft ExcelやWordを用いた従来型の管理手法に慣れている監査人から「使いにくい」「従来の方法で十分」といった評価が多く出る場合、導入プロジェクトが中止になる可能性がありました。しかし、プロティビティの担当者よりハンズオン形式でメンバーに丁寧な説明が行われたことで、導入に価値を感じ、チャレンジする機運が大きく高まったように思います。 「Diligent」の導入プロジェクトは2024年1月にスタートしました。約5カ月かけて、当社の監査業務とツールのフィット&ギャップ分析に基づくパラメータ構築やメンバー研修を通じ、導入を支援していただきました。「Diligent」には幅広い機能がありますが、当社の業務に合わせて、必要となる機能の選択をご提案いただいたこともスムーズな導入につながりました。 Image 【導入後の取り組み】導入直後から監査の質が数段階向上 「Diligent」は内部監査業務のみならず内部統制業務にも柔軟に適用できますが、導入当初はあえて適用範囲を限定することで、スムーズな導入とツールを用いた新たな業務が定着しやすいことをプロティビティからアドバイスいただきました。それに基づき、現在、国内グループに対する内部監査業務から「Diligent」の活用を開始しています。導入メリットとして、管理プロセスの改善はもちろんですが、導入効果として大きかったのは、監査の質が数段階向上したことでした。監査の質の向上には3つの要素があります。1つ目は「発見する力」。監査部門のメンバーが登録した情報を管理者がレビューすることで、抜け漏れを精緻にチェックできるようになりました。監査調書の内容を合理的に検証することが可能になったため、監査が失敗に終わるリスクも低減されました。2つ目は「保証する力」の向上。「Diligent」を活用することで、最初に定めた個別の監査の目的を見失うことなく、監査手続を進められるようになったため、監査結果に対する信頼度が高まり、「問題なし」の一言に、より深い意味を込められるようになりました。3つ目は、「提案力」の向上です。「提案力のある監査部門」を標榜するなかで、「Diligent」により精緻な分析と原因の特定が可能になったことで、有効な改善案の提案ができるようになりました。監査報告会では、問題点を指摘するだけでなく、問題解決につながる前向きな提案も増えており、経営層や監査対象部門からお褒めの言葉をいただき、監査部門として初のグループ貢献表彰を受賞するといった成果も生まれています。【今後に向けて】 AI活用で効率化と高度化を目指す今後に向けて、足元では「Diligent」の適用範囲の拡大があります。現在、国内グループの内部監査業務への適用にとどまっていますが、J-SOXや海外グループへの適用に向けて、準備を進めているところです。さらに、その先に見据えているのは、データ分析機能の活用や、他システムとの連携、AIを活用した監査業務の効率化と高度化の実現です。国内外のグループ子会社のデータを集めているデータレイクから「Diligent」にデータを連携することで、より高度なデータ分析が可能になり、一部の監査及びJ-SOX業務が自動化されます。AIについては、経営監査本部用のAI環境を準備中です。「Diligent」に格納された過去の監査データをAIに学習させることで、新しいメンバーが分からないこともAIに聞けば答えが返ってきたり、監査人が気づかないようなポイントも教えてくれたりするような、監査人の支援環境を整備する計画です。 Image J-SOXへの適用など定常的な単純作業は全て自動化し、リスクの高い分野や難易度の高い領域については、「Diligent」とAI、ヒトが協業することで、監査業務の効率化と高度化を同時に実現していきたいと考えています。引き続き、プロティビティには監査インフラと監査人支援環境の整備と拡張で協働していければと思います。また、監査業務におけるデータ分析やAI活用に関するナレッジ、各社でのツールの有効な活用方法などについて共有できる業界横断的なコミュニティづくりについても企画していただきたいと思っています。 Image (左より)監査企画推進部 プロフェッショナル 林 一也氏、監査企画推進部 安村 誠巨氏、内部統制監査部 プロフェッショナル 内田 孝氏、経営監査本部 本部長 川﨑 幸生氏、監査企画推進部 部長 森 正輝氏、経営監査部 部長 東郷 伸宏氏※ ご担当者の役職名は、インタビューを実施した2025年7月時点のものです。 Topics 内部監査/コーポレートガバナンス