解説:テクノロジー進化が金融業界に与える影響

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解説:テクノロジー進化が金融業界に与える影響

デジタルというキーワードが金融業界に登場して久しいが、その重要性は日に日に増しています。このまさに「破壊的技術(Disruptive technology)」とも言える現在のIT技術は、競争の観点、規制の観点、セキュリティの観点、運用の観点のあらゆる側面から、金融業界の経営層にとって最優先検討事項の一つとなっています。

この記事は、金融業界(FSI)経営層およびシステム担当役員へのヒアリングを元にまとめられた弊社Thought Leadership資料「Top Technology Trend in FSI Organization」に記載の内容を一部要約したものになります。詳細につきましては弊社ホームページにございます当該冊子をご確認ください。
https://www.protiviti.com/US-en/insights/top-technology-trends-financial-services-organizations

■ 変革とイノベーション (デジタイゼーション)

現在、急速に拡大するフィンテック企業の存在は、現行の金融機関に多大な圧力となっています。フィンテック企業は、老朽化したレガシー基幹システムや実店舗などの物理的な制約を受けないため、それら制約がのしかかる伝統的企業に比較して迅速に革新をしていくことが可能です。金融機関が直面している課題は、まさにその競争下にあっていかにスピーディーに最新テクノロジーを既存のテクノロジー/業務基盤に組み込んでいけるかであると言えるでしょう。
調査では、主要システムのアップグレードを検討している企業を含むおよそ70%の金融機関が、自分たちが現在ITトランスフォーメーションの未だ過渡期にあると回答し、他業界における調査結果54%を大幅に上回っています。回答では特定の技術革新の分野によって具体的な障壁は多種多様ではあるものの、以下の共通事項が挙げられました。
●コスト
●施策としての優先順位付け
●規制・コンプライアンス対応
●セキュリティとプライバシーに関する諸問題

モバイル決済やクレジットカードの即時承認をはじめ、リアルタイムのデジタル決済など、金融機関はより多岐にわたるサービスに適した最新技術を必要としています。ますます多様化していくユーザー環境の中で、金融機関は新サービスローンチなどの需要に応えつつも、上手く顧客情報を保護していく必要があり、その為には戦略的なリスク対策が重要となります。
しかし、多くの金融機関では、システムや社内プロセスに焦点を当て、サイロ化されたボトムアップの観点からテクノロジーリスクを検討するに留まっており、顧客体験向上などの本質的な議論の取り込みが不十分なケースが散見されます。このような包括的リスクベースの焦点欠如は、ビジネスそのものや顧客に対して付加価値を提供し辛いテクノロジー偏重な基盤構築を招くおそれがあります。戦略目標にあったデジタル変革を促進するためには、ボトムアップとトップダウン両方のアプローチを統合することが不可欠です。ボトムアップ・アセスメントは機密性、完全性、可用性、安全性、コンプライアンスに重点を置くのに対し、トップダウン・アセスメントは戦略目標の達成、適度な維持費、ビジネスのアジリティ確保に関するリスクに着眼します。戦略目標を達成していくため手段としてのデジタル変革を可能とするのはこのような包括的な視点での戦略の戦術化、およびそこに潜在的に存在しているリスクへの包括的な対策が必須となります。

■ コスト圧力とシステムのシンプル化およびレガシーシステムの近代化

20%以上の企業において、今年度IT支出が増加することが予想されています。また44%の金融機関が、デジタル変革促進の阻害要因としてコストを挙げています。そんな中で、金融機関におけるITオペレーション費用、保守費用の合計は全IT投資の48%を占め、更にはイノベーションに対する投資は12%に留まっており、IT運用に係る効率性向上をはかり、イノベーションへ更に原資を配分していく必要がある状況が推察されます。

その最も効果的な施策としては既存システムを単純化・簡素化する方向性で刷新することによる既存業務の合理化です。この際に気を付けなければならないのは、効率化・合理化されるべきは既存の業務モデルではなく、戦略目標から導き出された「あるべき業務モデル」をベースとした業務です。そうした業務モデルを構築するにはより柔軟で単純化・簡素化されたITアーキテクチャの存在が望ましいと言えます。

システムの単純化・簡易化は、システム刷新イニシアティブの要であり、以下のような利点が期待されています。
●コスト圧力の緩和
●運用リスクの軽減とセキュリティ強化
●データ統合、報告書合理化、コンプライアンス業務フロー自動化によるコンプライアンスリスクの緩和とコンプライアンスコスト削減
●データ分析の高度化
●陳腐化したシステムやサポートされていないシステムの排除による戦略的リスク軽減

最大のコスト圧力の1つは、コンプライアンス対応にかかる費用の増加であると考えられています。金融規制強化により監査と報告の頻度と複雑さが増していることが主な要因として挙げられます。これは、新しいテクノロジーとシステムとの連携によりコストを削減し、コストプレッシャーの緩和につながる新たな領域でもあります。

主要システムの近代化により、「ストレート・スルー・プロセッシング」によるデジタル化に伴う運用コスト削減と、手動処理の削減による効率性の向上の両面からの改善効果が見込めます。また、ロボッテックオートメーションのような暫定的な方法であっても、複数のデータベースに同じデータを手動で取り込む等の、冗長なタスクを自動化することでコストの負担軽減が可能となります。

ロボテックオートメーションは、オフショア化されたプロセスを本国へ戻す際に非常に効果的に活用されてきました。 ただし、コスト負担の軽減には有用であるものの、冗長的なシステム構成を永続的に使用することになるので、システム運用コスト削減につながるような構成のシンプル化にはつながりません。中長期での総合的な効果を狙うには、抜本的なシステム構成の簡素化がやはり必要になってくるものと思われます。最後に、金融機関のIT運用予算の大部分は、新製品やサービスを既存の基幹システムへ取り込む際に発生する様々な施策に費やされており、新商品・サービスへの即時対応も含めた包括的運用費の圧縮についてもシステムのシンプル化、レガシーの近代化が欠かせないものと思われます。
 

■ 最後に

金融サービス業界は、本質的にテクノロジー企業でもあります。実際に、あらゆる商品やサービス、ビジネスプロセスはテクノロジーによって有効化され、したがって、商品・サービスの提供・顧客体験・業務効率の向上も必然的に「デジタイゼーション」に根ざしています。

なお、本稿では、一部のみの要約となっておりますが、弊社Thought Leadership資料「Top Technology Trend in FSI Organization」では、セキュリティ、プライバシー、リスク、コンプライアンスなど、様々な観点から更にデジタル変革についての視点を提供しております。あわせてご一読ください。(URL: https://www.protiviti.com/US-en/insights/top-technology-trends-financial-services-organizations

(2017年メールマガジン5月号 特集記事)

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