解説:攻めと守りの全社的リスクマネジメント~新開示府令とESG/SDGsの動きから

The Responsible Technology Firm of the Future: Corporate Social Responsibility
解説:攻めと守りの全社的リスクマネジメント~新開示府令とESG/SDGsの動きから

1.新たな開示要請とリスク情報

2019年1月31日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、「開示府令」)が改正され、さらに2019年3月19日に金融庁より公表された「記述情報の開示に関する原則」(以下、「開示原則」)では、2020年3月31 日以後終了年度から、開示府令が要請する具体的な記載内容が示されています。

これは、従来の開示では、会社の戦略や経営者の方針がわかりにくいことから、金融庁は、投資家による適切な投資判断を可能とし、投資家と企業との深度ある建設的な対話に繋がる項目として、経営方針・経営戦略等、経営成績等の分析、リスク情報、ガバナンス情報を中心に、有価証券報告書における開示を大幅に見直すことを目指したものです。

具体的には、経営環境や事業上のリスクについて企業経営者が実際どう見ているのか、“経営者目線”の情報開示の拡充が図られたものと言えます。主な内容として、競争優位性や製品・サービスに関する見方、経営上のリスクが事業に与える影響の内容や対応策、特に重要な会計上の見積りの変化が経営に与える影響などがあります。さらに、主要なKPIや、資本コスト、セグメント別の情報などにおける開示も求められています。

特に、事業等のリスク関連では、経営環境や、ビジネスモデル、事業戦略との関連付けを意識し、マテリアリティを加味した重要なリスク情報に加えて、その発生可能性や対応策などの開示までもが一層詳しく求められることになりました。事業等のリスクは、翌期以降の事業運営に影響を及ぼし得るリスクのうち、経営者の視点から重要と考えるものを説明するものです。取締役会や経営会議において、そのリスクが企業の将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性に応じて、それぞれのリスクの重要性をどのように判断されているか、その対応方針や戦略について、投資者が理解できるような説明が期待されています。例えば、顕在化する可能性の程度や時期については、経営者として判断した根拠が記載されることが望ましいとされており、今までのようなリスクの羅列や、事業環境の変化に対応していない前年同様の開示は認められなくなります。さらに、価値の毀損につながるような下振れリスクのみならず、上振れリスクも含めた、不確実性という観点でリスクを幅広く見ていく必要があります。企業側からすると、テーマとしては新たなものは少ないと判断されますが、何をどこまで、どのように開示するかが問われることになります。

 

2.如何に対処するか

現在、デジタルトランスフォーメーションが急速に進む中、持続的成長には、イノベーションや事業ポートフォリオの見直しが不可欠になっています。GAFA に象徴される新たなビジネスモデルの急激な台頭とともに、AIや5Gがもたらす新たな機会と脅威への対処は多くの企業で喫緊の課題となっています。

今回の開示府令や開示原則は、“攻めのガバナンス”を旗頭とする我が国の近時のガバナンス改革を後押しし、日本企業の競争力回復を目指す一連の動きの一環と考えられます。従って、企業側としては、ガバナンス・コードへの対処においては、Comply or Explainへの単なる対応ではなく、会社の未来を見据える中で、急激な経営環境の変化に対処し、ビジネスモデルやポートフォリオをいかに変革していくかなど、“何を変えて何を変えないのか”を見極める―不易流行を改めて検討するきっかけと位置付けることが大切です。

従って、リスクマネジメントにおいては、マイナスのリスクのみならず、プラスのリスクも含め、リスクを不確実性と捉え、限られた経営資源をベースとするリスクテイクとリターンを如何に確保するかという価値創造ストーリーを描くべく、全社的リスクマネジメント(ERM)の考え方やその導入をあらためて見直すことが効果的です。開示の問題はその流れで検討していくものであり、開示のためだけの新たな負荷を受け入れることは避けるべきです。

さらに、昨今のESG/SDGsの動きは、投資判断や格付けにおける存在感も急速に高まっており、企業に待ったなしの決断を迫っています。それは、価値創造ストーリーにおいて、如何にESG/SDGsを取り込むかであり、つまり、リスクテイクとリターンのシナリオにおいて未来を如何に描き切れるかどうかが問われているのです。これは、まさに“ESG/SDGsリスク”というリスクが、新たに取り組むべきリスクとして急浮上していることを認識する必要があることを意味しています。この“ESG/SDGsリスク”に対処するには、その企業全体へのインパクトを考えると、全社的リスクマネジメントの視点が不可欠となってくるのです。

 

プロティビティでは、このような企業の課題に対処すべく、来たる10月に、開示府令への対応や、ESG/SDGsリスクと全社的リスクマネジメント(ERM)に関連するウエブセミナーを企画しています。ご興味のある方は、是非参加ください。

 

(特集記事:メールマガジン2019年8月号)

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