東レ株式会社様:DXによる内部監査の変革事例

東レ株式会社様:DXによる内部監査の変革事例

Toray Industries
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監査業務のDXを推進し、コンサルティング機能を強化​

経営に貢献する監査部門への変革(トランスフォーム)

国内外に多数の拠点、グループ子会社を持つグローバル企業において、限られた人的資源でアシュアランスのみならずコンサルティング機能を強化するためにはデータ分析を活用した内部監査が有効です。東レ株式会社では、データ監査の導入によって、不正やエラーのリスクに対処しています。

(左より)監査部 監査部長  真野 充治 氏、専任理事(監査) 福田 雄二 氏、主席部員  渡部 真司 氏

【データ監査導入前】不適切事案の発覚を契機にデータ監査を導入

東レは1926年に創業し、先端素材メーカーとして新分野・新素材の開拓に励み、創業時の繊維に加えて樹脂、ケミカル、フィルム、さらには炭素繊維複合材料、電子材料、医薬・医療、水処理・環境といったさまざまな分野において多くの先端材料、高付加価値製品を創出しています。

2019年3月末現在のグループ会社数は275社。このうち国内が101社、海外が174社となっており、これらを監査するのが監査部の仕事です。東レ本体の監査部のスタッフは現在14人。内部監査業務を「業務プロセス統制の監査」と「機能別全社マネジメント統制・IT統制の監査」の2つの領域に分けて前者に6人、後者に1人をそれぞれ配置しています。

データ分析を活用した内部監査に取り組んだのは、他の事業本部に比べると専門性が高く、経費支出権限や人事ローテーションなどの点で特異な状況にあった、ある事業本部で2015年に不適切な発注の事案が発覚したことがきっかけです。

それまで、経費支出のコントロールについては、財務経理部門が経費伝票発行時の予防的統制として、定められた権限者による事前承認や証憑添付の事前チェックを実施していましたが、支払先や支払方法のパターン、頻度等についての異常性のチェックまでは手が回っていませんでした。一方、当時の監査部にも取引全件を対象にサンプリングによる試査などによって異常値を発見するという監査手法が定着していませんでした。

【データ監査導入:東レ本社】CAATで件外調査を実施、内部統制上の弱点も発見

不適切発注の発覚によって、直ちにその原因究明を進めるとともに、他にも同様の事案が発生していないかどうか件外調査を行う必要に迫られました。しかしながら、大量の経費データを手作業でチェックしながら異常取引を発見することは、時間的、工数的、技術的にも非常に困難であったため、すぐさまプロティビティにお願いしてCAATにリスクシナリオを実装して分析プロセスを自動化した経費モニタリングツールを導入しました。

このツールを使ってSAPに蓄積された当該事業本部の過去3年分30万件以上の経費関連データを分析した結果、本件以外に不適切発注が行われていないことを確認することができました。また、データ分析で検出された経費データの異常点を確認することで、内部統制上の弱点を発見し改善提案することにもつながりました。

モニタリングツールの構築から検出データの分析および課題の抽出に至るまで、プロティビティにはデータ監査の豊富な知見をベースに当社の要望に速やかに対応いただき、確実に成果に結び付けることができました。加えてリスクシナリオに基づいてデータを分析するというデータ監査の知見やノウハウを吸収・蓄積できたことは、監査部にとって大きな収穫となったほか、経営層からはデータ監査に対する前向きな評価を得られました。

これを契機に不正・エラー再発防止策の一環として、このCAATによる経費モニタリングを全社横断的に定期的に実施することとしました。具体的な実施方法としては、支払先別累計額トップ10、多頻度取引、個人立替累計額トップ10、新規取引先との取引などを抽出条件として、検出された取引データについて現業部門にその詳細内容を確認した上でその取引が適切かどうかを検証しています。またモニタリング業務を進めるにあたっては、財務経理部門が四半期単位で事業本部を、監査部が内部監査の過程で本社・機能本部を、というように双方で作業を分担しながらその結果についてお互いに情報共有しており、1線・2線・3線のディフェンスライン全体で効率的・効果的に進められるように工夫しています。

経費モニタリングの導入については当初は現業部門による抵抗も予想されましたが、客観的で公平な仕組みということもあり、社内全体に浸透しています。また、モニタリングによって検出された経費データに関して現業部門にヒアリングしたり、モニタリングツールの定期的な運用を社内に浸透させたりすることで、社員一人一人が適切な経費支出に留意するようになるなど、牽制効果の発揮と健全な統制環境の構築に貢献していると認識しています。

【データ監査導入:グループ内水平展開】優先度の高い国内外子会社13社にデータ監査を横展開

東レ本体での成果を受けて、CAATによる経費モニタリングをグループ内で積極的に横展開しています。国内外の商事会社や中国の製造会社など毎年対象子会社を拡大し、2年間で13社にモニタリングツールを導入し、運用を開始しました。さらに国内商社2社において経費データだけでなく、販売・仕入・在庫データを組み合わせたモニタリングの導入を検討中です。導入にあたっては子会社の内部監査部門をはじめとして、子会社の経理部門や情報システム部門等の各部門とも緊密に連携しながら進めています。

当社グループは、会社ごとの基幹システムを統一できていないため、グループ内での展開にはCAATに組み込むスクリプト(プログラム)の修正が必要になりますが、プロティビティにお願いすることで費用対効果に優れた方法を提案していただいています。

データ監査に関する専門的なノウハウや知見を常にアップデートするためのスペシャリストを自社の中に抱え込むことは現実的ではありません。専門性はプロティビティのような外部のプロフェッショナルから取り入れながら、我々監査部はビジネスや組織文化に対する知見を深めていき、両者を組み合わせていくことによって、デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した質の高い監査の実現を目指します。その推進にあたって、プロティビティには継続的な支援をお願いしたいと考えています。

【今後に向けて】攻めのガバナンスを実現し、監査部のプレゼンス向上へ

内部統制を推進する上での本来あるべき企業の姿として、1線、2線のディフェンスラインが自ら内部統制に取り組む姿勢を高めていくことは必須要件です。そのためには監査部のミッションとしてコンサルティング機能の強化は不可欠であり、その一つの手段として、内部監査分野のDXを一層推し進めていきたいと考えています。

さらにはこれからのあるべき内部監査の将来像として、ルールの有無とルールへの準拠を確認する旧来型の守りのガバナンスに留まるのではなく、例えば、企業買収・統合、デューデリジェンス、設備投融資計画の立案やフォローアップなどについても、リスクとコントロールの観点から当社の置かれた状況の診断と前向きな提言を行うなど、経営が必要とする情報を発見・報告し、経営に役立つ監査に進化していきたいと考えています。