改訂コーポレートガバナンス・コードの実践に向けて

東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コード改訂案を最終化し、2021年6月11日に公表しました。本コードでは取締役会の役割・責務のひとつとして「内部統制や先を見越した全社的リスク管理体制の整備は、適切なコンプライアンスの確保とリスクテイクの裏付けとなり得るものであり、取締役会はグループ全体を含めたこれらの体制を適切に構築し、内部監査部門を活用しつつ、その運用状況を監督すべきである。」と改訂されました。今回の改定により「先を見越した全社的リスク管理」、「グループ全体を含めた体制」「内部監査の活用」などが明記され、守りだけでなく、サステナブル経営に資するための先を見越した全社的リスク管理やグループガバナンスの取り組みの期待もステップアップしました。内部監査の役割としても、上記の運用状況を取締役会が監督するのに役立つ監査計画・報告が期待されていることとなり、多くの企業の内部監査機能のさらなるステップアップが期待されます。

スピードが格段に速くなった現代社会においては、企業が取り組むべき新たなリスクも続々と顕在化していきます。それらの状況を理解した上で適切に対処出来なかった場合、企業の持続可能性を毀損する恐れもあります。ただ一方で、それらをうまく活用することで新たな企業価値・競争力を創造できる可能性も高まります。
サステナブル経営に資するための先を見越した全社的リスク管理やグループガバナンスの取り組みは、これらの活動を企業価値・競争力の向上につなげるために、外部環境へのキャッチアップ、経営者から各従業員までの理解の浸透、それらに根差した具体的な活動、そしてそれらを伝えるステークホルダーコミュニケーションの全てが必要となります。
また、今回のCGコードの改訂を受け、プロティビティでは、改訂コーポレートガバナンス・コードに対応するための「改訂コーポレートガバナンス・コードの実践に向けて~全社的リスク管理(ERM)・内部統制・内部監査に関する12のアイデア」をまとめました。各社のステップアップの取り組みの参考になれば幸いです。

改訂コーポレートガバナンス・コードの実践に向けて

~全社的リスク管理(ERM)・内部統制・内部監査に関する12のアイデア~

ガバナンスと戦略

1. ESGに関わるステークホルダーの要請や事業環境を反映したビジネス戦略的ガイドラインを定義する。

2. 自社を取り巻く中長期的な環境変化や社会課題に関するESG関連リスクを特定し、評価する。

3. グループ全体を含めた取締役会・監査役会等の報告・承認事項、内部監査からの報告内容を見直す。


全社的リスク管理(ERM)

4. 企業のリスクテイクの裏付けとして、全社的リスク管理(ERM)を戦略と連動させて取り組む。ESG関連リスクも全社的リスク管理(ERM)に組み込む。

5. 危機管理・内部監査とも連携し、グループ全体の全社的リスク管理(ERM)の実効性を確保する。

6.取締役会は、全社的リスク管理(ERM)のグループ全体における運用の監督に、内部監査活動と報告を活用する。


内部統制・内部監査 

7. ESGの取組みについての基本的方針の組織への浸透を推進し、浸透状況を評価する。

8. 自社の調達先のESG対応状況を把握し、必要に応じてESG監査を実施するなど、継続的にモニタリングする。

9.データやデジタルを活用し、より高い精度のリスクの特定・評価やモニタリング・内部監査に取り組む。(次世代の内部統制・内部監査)


10. ESGに関する重要事項の分析に必要なデータを特定し、報告プロセスを確立する。

11. ESG関連の開示要請・動向を注視し、体制・プロセス・データを整備して、情報開示の信頼性を確保する。

12.リスク管理とリスク情報開示を連携させ、内部監査は開示の有効性を確認する。

 デジタライゼーションやESG、コロナ禍により経営を取り巻く環境の変化が加速する中で、企業のガバナンス強化、全社的リスクマネジメントの実践など、皆様のお役に立つ情報をまとめていますので、是非ご覧ください。

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